子どもと医療・障害・いのち 事例 3

わたしと二人の発達障害児のたからさがし 大変だけれど、子どもたちの可能性という宝探しのような育児

発達障害あるあるラボ主宰者 奥田 加奈子

奥田さんの顔写真

わたしは発達障害の子どもしか育てた事が無い

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 我が家の娘は軽度知的障害を伴うアスペルガー症候群、息子は重度知的障害を伴う自閉症。真逆なタイプの発達障害。発達障害と診断された親はとても大変な育児を経験することになります。でも物は考えようです。私は選ばれた人、健常児とは違う育児ができる、この子の未知なる可能性を探し出すチャンスをいただいた。私にしかできない事がある、私だからできる事がある。発達障害と診断されたからと言って悲観することはまったく無いのです。発達障害の子どもはとても感性が豊かです。二人とも障害児。健常児と比べること無く育児ができているので反対に良かったと感じています。

発達障害と診断されたらアクションあるのみ

 発達障害と診断されたら、どんな支援が受けられるか?自分から情報を取りにいきましょう。決して一人では無い、助けてくれる人は必ずいる、どこにヘルプを出すのか?最寄りの保健師さんや障害者支援センターへ気軽に問い合わせてみてください。情報収集はもちろんですが、親の会や勉強会へ積極的に参加してみてください。そうする事で今までと違う世界観が見えてきます。自分なりのネットワークの構築はとても大事です。そして先輩ママさんはとてもたくさんの情報を持っています。参考になる事は実践してみましょう。ABA (応用行動分析学) 、TEACCHプログラム (支援の構造化) の療育は家庭でもできます。難しいと思うことはありません。ちょっとした創意工夫とアイディアです。絵カードなどで視覚支援など構造化してあげる事で、家庭での居心地もとても良くなりますし、何よりその子と意思の疎通が図れるようになります。言葉が出ないからと諦めないでください。違うやり方でコミュニケーションをとる方法を探ってください。謎解きみたいに楽しんでみると、心の負担はぐっと軽減されることでしょう。

身近にいる発達障害の子どもたち

 統計では一クラスに2、3人はいると言われている発達障害の子どもたち。発達障害の子どもの行動は健常児の親からしたら理解しがたいものでしょう。自転車の車輪をくるくる回したり、ひたすら物を一列に並べたり、ぴょんぴょん飛び跳ねたり、高いところに上がったり。でもその行動は意味も無くやっているわけでは無いのです。気持ちを落ち着ける為にやっている場合もありますし、そっちの方がおもしろいからなのです。一列に並ぶこともしない、走り回っている子もいます。周りから見ると躾がなってない、落ち着かない、周囲の行動に合わせることができない問題児扱いされてしまう子どもたち。この子たちから見たら、私たちがやっていることが理解し難い行動なのです。なぜ皆で同じお遊戯するの?お絵かき 興味無いからやらないよ!給食食べたいもの無いから食べないよ!彼らからみたら私たちが宇宙人なのです。皆変なことしてるな、そんな事よりこっちの方がおもしろいし、心が落ち着く。発達障害の子どものやってる事を阻止しようとすれば、噛みつく、叩くなどの問題行動に発展します。型にはめようとせず、その子の目線に合わせて寄り添ってあげるだけで、発達障害の子どもはとても伸びます。発達障害の子どもを持つ親に「大変だね、頑張ってね」は禁句です。日々とても頑張ってます。その代わりに「何か私にできることはない?」そんな言葉がけをしてあげてください。その一言で救われる親は多いのです。

 目標はスモールステップで

 健常児が当たり前のようにできることは、発達障害の子どもには簡単でないことがほとんどです。トイレトレーニング、スプーンを使う、偏食など。悩みをあげたらキリがありません。一度にすべてやろうとすると親も子も負担になるだけ。とある先生に言われた一言「一生 おむつしている子はいないよ。一生 手づかみで食べてる子はいないよ。食べたい時期がくれば食べるから水分と何か食べられるものが一品あれば死なないよ」この言葉に何度救われた事でしょう。だからと言って何もやらなくて良いというわけではありません。どうやったらできるか?考えて、その子にあった補助は不可欠です。すぐにできないから発達障害。小さな目標を設定してゆっくり見守ってあげてください。私が設定した小さな目標の一例。コップでジュースを飲む。スプーンを使ってご飯を食べる。手をつないで歩く。帽子をかぶる。クレヨンを持つなど。食事にまつわることは本当に大変でした。スプーンがうまく使えないので、床は汚れるし毎食後の掃除が大変。そんな時先輩ママさんからいただいたアドバイス「椅子の下に新聞紙敷いて、食事が終わったら新聞紙を丸めて捨てちゃえば?」この発想は私には無かった。日々のストレスをいかに軽減していくのか?発達障害の親にとってこれも一つの課題です。小さな目標を達成した時の喜びはひとしおです。初めて素揚げのサツマイモを食べた日、初めておにぎりを食べた日。障害児の親だからこそ覚えていられる記念日。やればできる子、この子たちだって可能性はあるんだ。最後まで諦めないこと、挫けないこと。そんなことをたくさん教えてもらった幼少期。そのスタンスは今も変わらず続けています。

手作りのカードの写真 1 運動着の半ズボンを畳む順番を3つに分けてカードにしている。 手作りのカードの写真 2 動物の絵と名前を対応させている。

発達障害をオープンにして生きていく

 現在ではいろいろな支援体制が整い、発達障害に対しての認知、理解も高まり、合理的配慮がされるようになってきました。今から10年前は制度も整っていない、どちらかというと人に言いづらいことでした。でも私は隠して生きていくのは嫌でした。子どもの味方は一人でも多い方が良い。でもどうやったらわかってもらえるだろう?そんな時に出会ったサポートブック。子どもの特性を事細かに書面にする事で、自分の子どもがどこでも居心地良く配慮してもらうための要は取説みたいなものです。サポートブックには子どもに対しての呼びかけの仕方、ダメな時の注意の仕方、昼寝のリズム、好きな食べ物、好きな遊び、問題行動の対処法など。日々子どもを観察して知っておいて欲しいことをピックアップしました。文字だけでは無く写真や挿絵を入れて読みやすい工夫もしました。私はこのサポートブックを保育園や保健師さん、ママ友だち、子どもと関わってくれる人すべてに目を通して貰うようにしました。保育園では加配の先生だけではなく、園のすべての先生に読んでもらいました。そうすることで子どもの居心地はぐんと良くなるものです。発達障害をオープンにしてわかったこと。積極的に関わってくれる人と関わりたくない人に二分されるということ。この子たちは人に嫌われるために生まれてきたのではない。世の中の迷惑になるために生まれてきたのでもない。世の中に必要だから生まれてきたのです。発達がゆっくりで凹凸もある。凹んだ部分を補う方法は視覚支援で何とかなるもの。そういうところにばっかり目を奪われると子ども本来の良さを失うことにもなります。凸に目を向けてあげることが大事です。この子のこだわりで良いこと何かな?これができるからこんな可能性あるのかな?発達障害の子どもも可能性は持っているのです。それは親だけでは気づかないこともあります。障害をオープンにすることで子どもの良いところ探しを皆でするのです。幼少期は手がかかりとても大変な時期でしたが、小さな喜びをたくさん感じられた時期でもありました。そして波乱万丈の義務教育、学童期へ。


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