子どもとメディア・ネット 事例 5

「子どもとメディア信州」正式発足しました

代表 松本市立菅野中学校校長 松島恒志

顧問 NPO子どもとメディア代表理事 日本小児科医会「子どもとメディア委員会」特別委員 清川 輝基 先生

吉村小児科院長 日本小児科医会理事「子どもの心・子どもとメディア担当」 内海 祐美 先生


1 長野県内における子どもとメディアの問題に関する啓発等の状況

 長野県内における子どもと電子メディアに関する啓発活動は、その必要感は認識されつつありますが、どう進めていくかの方向や、その手立てについては学校や園、自治体等で対応がさまざまであり、またその温度差も大きい傾向があります。

 そして、学校や園、自治体等が「子どもとメディア」、「人権教育」、「性被害等防止」、「健康被害」といったテーマで講演会や学習会を開催するとき、マンネリ傾向があり以下の課題が指摘されています。

● ニュースになった事例や、一般的なトラブルを対象に学習・研修会等が行なわれることが多く、多くの子どもや家庭が抱える問題に迫りきっていない。

● どのように啓発活動を進めていったら良いかを悩む団体が多い。

● ニーズに合った講師がなかなか見つからない。

● 講師を探すより関係機関に派遣を要請したり企業等に委託したりしたほうが手続き等が楽である。 (探す手間も省ける)

 また、園や学校という大きな単位だけではなく、学年、学級、保育士、教員、医師といった限られた小集団単位でのニーズが増え続ける中で講師の確保は難しく、関係機関から派遣されてくる講師や、企業等に頼らざるを得ない状況があります。派遣されてくる講師は、不慣れであったりその立場に特化した内容のみであったりすることがあります。また、企業等の講演会は、研究され整っているために無難で好評な場合もありますが、一般事例等をもとに研究されているが故に新鮮味にかけることがあります。

● 「毎年同じような話だ」「子どもや保護者が知っているような内容だ」という声が非常に多い。 (一般的な内容については、最近の子どもや保護者は理解できているし、機関の人や会社の人がやっているので親近感がないというもの)

● 対象となる園や学校、保護者の実情を十分に把握できていないので、対象者の意識とのずれがある。 (県平均や全国平均を元にすることが多いため)

2 「子どもとメディア信州」の発足に向けて

● 全県で連携できる協議体が必要

 前述の課題に対応していくためには、各団体等が単独で情報モラル教育を進めていくのではなく、より効率的に、より実効性があるように互いに連携し合って推進していく必要があります。そのためには、ぜひとも全県規模の自主的な参加で構成される本協議体を立ち上げていく必要があると考えました。

 長野県内では、園や学校、地域の実情をよく理解した志ある方が忙しい仕事の中、スケジュール調整して実施されている講演会等に要望が強くなっています。しかし、学校や園、地域の要望に応じて、実際に講演できる方の人数は限られています。そこで、実際の教育現場や家庭のニーズを把握し、どのような学習会や講演会を実施したら実質的な効果が上がるのかを協議し、それを実施できるような「メディアインストラクター」を養成して効率よく啓発を進めていく本協議体の発足を目指しました。

● まずは県内の有志、関係団体が結集

 県内で活躍する情報モラル教育・健康教育等の実施者や、啓発活動に携わっている15名ほどが、互いに連絡を取り合って本協議体の発足に備えました。まずは、①講演のニーズを把握する必要があります。その一方で、②メディアインストラクターの候補を募る必要があります。

 ①も②も兼ね備えた団体にしていくためには、関係団体との連携が不可欠です。そこで、以下の団体に理解と協力を求めました。各団体からはとても前向きな回答をいただきました。こうして「子どもとメディア信州」が力強く発足できることを確信しました。

・長野県PTA連合会 (全小中学校PTA)

・長野県保育連盟 (公立の全園)

・長野県私立幼稚園・認定こども園協会 (県内私立園)

・長野県小児科医会

3 メディアインストラクターの育成

顧問となってくださる、清川 輝基先生 (NPO子どもとメディア代表理事 日本小児科医会「子どもとメディア委員会」特別委員) 、内海 裕美先生 (吉村小児科院長 日本小児科医会理事「子どもの心・子どもとメディア担当」) と相談し、インストラクターを養成するための講座 (研修6日間) を計画しました。

初年度は30から40名のインストラクターを養成する予定です。

4 講演会 (学習会) 活動の推進と協議体の周知

インストラクターの募集をするに際し、どのような活動をするのかを具体的に知ってもらうためにも、養成と同時に講演会活動をしていく必要があると考えました (実績づくりは県の予算化にもつながります) 。

長野県内には、すでにインストラクターとしての資質を持ち、講演実績のある方が8名いました (2019.3月20日現在) 。その方々の「子どもとメディア信州インストラクター」としての活動のスタートを、2019年4月1日としました。この動きは地元有力紙「信濃毎日新聞」がいち早く重要視してくださり、3月20日の朝刊1面トップ記事として取り上げられました。県内の関心がいかに高いかを示す出来事でした。さらにより多くの方に本協議体を知ってもらうため、3月28日には、前述の4団体の代表が列席する中、長野県庁で記者会見を行ないました。

記者会見の様子

5 現在の状況と今後の見通し

反響は大きく、講演会依頼が複数届いただけではなく、まだ養成講座の詳細を公表していないにもかかわらず、「養成講座に参加したい」との声も届くようになりました。今後は、5月に行なう第1回の運営委員会で詳細を決定し、協力4団体を通して各園や学校、医療機関などに詳細を示したチラシを配布して講演依頼やインストラクター養成講座参加希望を募っていく予定です。

なお、本養成講座で子どもとメディアについて学習したいというご希望があればぜひ、長野県内に限らず、県外からもご参加ください。


※表  はじめ

講座期日 講座名 講師

上田市

2019年8月3日 (土) から4日 (日)

 

インストラクター養成講座A 基礎

 

清川輝基先生・内海裕美先生・古野陽一さん (NPO法人子どもとメディア常務理事)  松島

松本市

2019年12月14日 (土) から15日 (日)

 

インストラクター養成講座B 実践編1

 

清川輝基先生・内海裕美先生・古野陽一さん (NPO法人子どもとメディア常務理事)  松島

佐久市

2020年1月18日 (土) から19日 (日)

 

インストラクター養成講座C 実践編2

 

清川輝基先生・内海裕美先生・古野陽一さん (NPO法人子どもとメディア常務理事) 松島

※会場は3月末現在での予定です。講座の詳細は、2019年5月にお知らせします。

※表  終わり


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