結婚・子育て・保育 事例 5

互いに認め合い、学び高まり合う 職員集団を目指して

社会福祉法人ひまわり会 ひまわり保育園 髙木 美紗生


 「互いに認め合い、学び高まり合う職員集団を目指します」これは、私たちが働く、ひまわり保育園の保育目標に掲げているものです。

 保育目標の中に、職員集団のことについて触れている園は、あまりないかもしれません。私たちは、子どもを見るとき、クラス集団を見るとき、子どもたち同士が、「この子はこんな苦手なこともあるけど、こんな素敵な姿もあるんだ!」と一人ひとりを多面的に見て、認め合える集団になってほしいと願っています。それは、おとなである保育士も同じで、認められたら自信が持てる、認め合えている相手の話になら耳を傾けようと思える、そして、職員同士の関係は、必ず保育の中に表れ、子どもたちに返っていくと感じます。また、保育をする私たち保育士は、子どもたちと向き合い、保護者と向き合う中で、その人間性や考え方までもが問われる瞬間があり、悩むこと苦しいこともあります。どうしたら良いのかと自分に問いかけながら一人の人間として、成長させてもらっているようにも思います。悩んだ時は、学習と仲間が力になる!そのことには確信を持ち、悩んだこと学んだことを皆で共有し、保育観や「ひまわりらしさ」を模索していきたい…そんな思いを込めて作った目標です。

大切な場所「すみれ」

 ひまわり保育園の事務室の隣には、「すみれ」という名前の部屋があります。ここは職員の休憩室です。子どもたちがお昼寝をしている時間、5時くらいの退勤する職員が多い時間、「すみれ」の部屋からは、賑やかな話し声が聞こえてきます。「今日、先生のクラスの○○ちゃん、うちのクラスに遊びに来たとき、小さい子にすごく優しかったよ!」「この野菜、○○ちゃん苦手だったのに、今日、食べたんだよ!」「今度、こんなクッキングしてみたいんだけど、どうかな」…などなど子どもたちの話から、保育の話、家族の話、趣味の話…と話題はつきません。可愛いエプロンのカタログが置いてあったり、おすすめの本が置いてあったり、卒園児や保育園のことが新聞に載れば記事にマーカーをして冷蔵庫に貼り付けてあったり、お土産のスウィーツがあったり…という職員が心と体を休める場であり、情報交換の場であり、ここでの会話から、日々の保育への気持ちの一致や、子どもの見方を考えあうことのできる貴重な場でもあります。

 ひまわり保育園が開園してから14年たちました。開園してから数年は、職員みんな 休憩時間がとれないことが当たり前で、子どもの午睡中は、連絡帳や週案や記録を書く事務作業が満載、未満児クラスの職員は薄暗い部屋で静かに昼食を食べる…そんな状態でした。以上児クラスの職員も、保育室から離れることができず、気を抜くことのできない日々が続き、気持ちも身体も疲れてきてしまいました。そんな頃、労働組合が結成され、自分たちの働き方が保育にも直接ひびくのだということも痛感しました。そして、職員みんなで、①休憩は「すみれ」でしっかりとろう、②「すみれ」で事務仕事をするのはやめよう、ということを決めました。園長、主任をはじめみんなで考えながら、休憩時間を保障するための代替保育士の配置や体制づくりをするようになっていきました。

 認め合う関係づくり、お互いを知ること、身体と心を休める、そんなことに一役買っている「すみれ」の部屋です。

すみれ の様子。職員たちがテーブルを囲んで話している。

一人じゃない、みんなで保育をしていくために

 開園してから4年ほどたってからは、園内研修の時間も大切にしてきました。「ひまわりの保育のこと」「コミュニケーションのとり方」「異年齢保育につて」など、学習や振り返り、話し合いを重ねてきています。その中で、数年前に取り組んだ「観察保育」「交換保育」について紹介します。

● 観察保育

 自分のクラスではないクラスに入り、対象のクラスの様子を観察します (全クラスが対象で、観察も職員みんなが1回から2回ずつ行ないました) 。そして、気づいたこと、改善点、担任が困っていること、悩みなどを話し合いました。実際にクラスの中に入り、客観的に見てみると、「月案」の時に担任が言っていたことは、このことか!とわかったり、担任の思いや悩みに、より深く寄り添えたり、一緒に考えることのできる良い機会となりました。そして、見てもらい、一緒に考えることで「みんなで保育しているんだ」という意識が持て、保育自体を深めることになりました。

● 交換保育

 自分の持ち場を交換してみる研修です。担任を他クラスの保育士と交換、さらには保育士が給食室に入り、栄養士や調理師が保育室に入るということもしてみました。他のクラスに入ってみることで、そのクラスの子どもの様子、保育がわかったり、担任の思いや悩みに、より近づけたりする経験でした。給食室に入ってみた保育士は、給食づくりの大変さや、ありがたみを感じ、子どもたちに「おいしかった!」と言われるやりがいや嬉しさも感じていました。保育の中に給食室があるということも体験してみて肌で感じることができたようです。相手の立場を経験してみると、相手の思いや気持ちを理解できることがあります。また、自分の持ち場だけではなく、みんなで作っている「ひまわり保育園」なんだという意識もつよくなる研修になりました。

 また、職員会議も工夫しながら、皆で考えることや学び合えることを大切にしています。数人ずつのグループにして意見を出しやすくしたり、話が深まるように、正規職員会議、クラス主任会議、以上児会議、クラス会議、リーダー会議などの時間を作っています。できるだけ、勤務時間内でできるように体制も考えています。

 そんな研修を重ねながら、理事会とも一緒に学んだり、考えたりできるようにと職員と理事会と合同での法人学習会の取り組みも始めました。2018年度には、「私たちの保育って?」というテーマで、ひまわり保育園の園長と、2017年度までの主任で2018年度からは、同法人が経営することとなった院内保育所たんぽぽ保育園の園長が、「私たちは、こんなことを大切にしていきたい」ということを文章にまとめて、話をしてくれました。いろんなことを模索しながら、研修や学習を重ね、14年たって私たちが大切にしたいことが、明確になってきたのだと思います。

最後に

 30人近くいる職員が、それぞれの目線で子どもたちを見つめ、目の前の子どもの姿や子どもの事実をもとに、お互いの保育や子どもを思う気持ちを知りながら、それぞれの持ち味や、良さを発揮できる…そんな職員集団でありたいと思います。

園舎の写真

※分野 5 の記事は以上です。

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