子どもと共につくる地域 事例 8
子どもが困難を乗り越えて自立する力を育むため、地域が一体となって家庭機能を補完する一場所多役の子どもの居場所「信州こどもカフェ」を普及拡大するため、県、市町村、NPO、関係機関、支援団体、民間企業及びボランティア等の多様な主体による諏訪地域プラットホームを運営。適切な役割分担と協働のもとで、地域の実情に応じた「信州こどもカフェ」を設置するための体制を整備・支援することを目的とし、諏訪圏域において2年間、子どもの居場所づくりを目指し展開してきました。
昨年は居場所の在り方、地域の現状、課題やこれからの在り方等を意見交換、交流を行ない地域の状況を知る機会を重ねてきました。その中で、人材の確保、場所の確保、周知についてなど多くの課題が見えてきました。こうした課題を受けて今年度の目的は、子どもの居場所「信州こどもカフェ」の運営の担い手の発掘・育成の研修会開催、運営委の担い手となるスタッフ・ボランティア、担い手のコーディネーターの発掘、育成を図り、学習支援、食事提供、悩み相談等の担い手の研修も行なうことを目的として、5回の研修会を開催しました。
副知事「子どもの居場所づくりの出発点として、食事がとれない子ども、貧困家庭の教育問題、児童虐待、性被害などへの対応・相談の必要性、こうした現状への対応が求められています。それにはさまざまな活動をしている人が関わることが重要で、地域でそのことができる多様な人たちが集まって支援する、そうした場所がプラットホーム事業の目的です」
参加者「子どもが不登校で、中間教室にも馴染めず、子ども食堂を始めた居場所に参加しています。高校生のボランティアなどが増えればよいと思うし、今後もこの活動を広めてほしい」
副知事「民間の利点は横ぐしをさすこと。例えば行政は障害者支援と発達障害の問題と『信州こどもカフェ』の部署は別々に違うことをやっています。一つの居場所に、障害があってもなくてもみんな一緒に居られる場所を作るには民間の力が重要です。また、高齢者や若者、おとな、子どもが一緒にいられる居場所には、さらに多くの部署が集まりなかなか進みません。民間が縦割りを超え地域のニーズに対応する居場所を作っていくことに期待したい。不登校支援についてもっと県は支援していくべきと考えています。民間は自由に居場所を設定できるので、民間の居場所づくりを応援していきたいと思います」
参加者「高齢者の居場所を、子どもも来られる居場所にすることは制度的に可能ですか?」
副知事「国も地域創生社会として、一体的な支援を議論しています。子どもの問題も高齢者の問題も、家庭全体の問題として厚労省で議論しています」
子どもの置かれた状況への国の制度と現場の実態がどれだけ理解しあえているのかが問われます。
第1回「場所の確保」
末広プロジェクト代表 石城 正志氏
茅野市どんぐりネットワーク代表 山田 周平氏
諏訪圏域で食事提供をしている団体は、行政の場所、お寺、公民館等が実施場所になっています。食事提供は場所と実施団体の状況もあり、月1回の開催のところが現状でした。
運営費に対して、場所代、光熱費等がかかり、資金確保が大変。公的な場所を借りて行なうことで、成り立っている、これからの課題も見えてきました。
第2回 「人材の確保」
講師 児玉 典子氏 (反貧困セーフティーネット・アルプス世話人)
「地域の力を高める 私たちはどこを目指すのか」
● 何のための人材か?
● 行政がやるべきことをやることが必要。
● 何を目指していかなければならないか?
こどもカフェが社会の政策システムとして、子どもたちへの支援がどこまで必要かということまで、ボランティア活動が高めていかなければいけない。ボランティア活動を通して何が問題かを見通せるようにしていくべき。
● 人とつながり、どんな人生を送るか。
● 地域の力を高めることにつながる。
参加者からは「子ども食堂は貧困対策だけではなく、地域のコミュニティづくりにしたいと考えているが、本当に困っている人たちに届いているか疑問に思うことがある」。児玉さんは「参加している人のすべての事情を把握しているわけではなく、誰でも広く受け入れる気持ちと体制があれば人は集まってくると思う」と締めくくりました。
第3回 「資金の確保」
講師 高橋 潤氏 (認定NPO法人長野県みらい基金 理事長)
「資金力は継続力、組織力を強くする」
● NPOとは:社会的利益のために自己の経済的利益を目的としない。社会性、公共性のあるサービスを提供する。
● 行政では届かない支援であり、市民主体である。
● 社会に対して問題提起や政策提言を行なう。
● ワークショップを行ない、組織・取り組みたい事業、資金調達について具体的に考え、提示してみる。
どこの団体でも運営費をどのように捻出していくか、継続可能な財政をどう維持していくかは大きな課題ではないでしょうか。子どもの支援の在り方をもう一度考える機会になりました。
第4回 「子ども観」
講師 林 大介氏 (子どもの権利条約ネットワーク事務局長)
● 子どもの現状は今どうなのか?
子どもをどうとらえるか?おとなの意識が重要。
● 子どもとの関係をどう作っていくのか?
● ワークショップを通して子どもに対するイメージを
グループワークで意見交換する。
● 子どもの権利保障を進めるために
・子どもを一人の人間として尊重する。
・子どもとおとなの違いを理解する。
・外見だけで判断しない。
・子どもに与える影響を知る。
・「間」を大切にする。 (時間・空間・仲間・手間・ヒマ)
この講座を入れたのには訳があります。子どもの居場所づくりが叫ばれる中で、おとなは子どもをどうとらえているのか?という事です。地域での子どもが今、どんな現状で、どんな気持ちで過ごしているかです。
林氏は日本において「子どもの権利条約」の普及活動に取り組んでいます。この条約が日本で批准され、今年25年を迎えます。子どもの環境はどうでしょうか?今、子どもたちの状況はどうでしょうか?そのことが「子どもの居場所」に問われているのを感じました。
第5回 「こどもカフェを体験」食事をしながら…
青木 正照氏 (NPO法人ホットライン信州 専務理事)
美谷島 越子氏 (NPO法人フードバンク信州 事務局長)
最後の研修という事もあり、実際に食事を作り、食べて研修という機会にしました。
お二人から、食材の提供に取り組んでいる話を伺い、これから諏訪圏域での食事提供をしていく団体にとっては何よりの朗報となりました。
現在、諏訪圏域において食事提供ばかりでなく「子どもの居場所」が広がっています。事業を行なう中で、団体ごとにそれぞれの特徴があり、子どもたちが楽しく食事をし、集う光景を目にしました。
その一方で、さまざまな課題 (開催日、人材、場所、資金) のあることも見えてきました。そして何より心配になるのは子どもたちの状況です。長野県の子どもの自殺率は全国トップ。引きこもり、不登校、虐待等が身近なところで起きているにも関わらず見えないでいることです。現在の居場所に集っているのは、日頃から元気な子どもたちが大多数ではないでしょうか。本来は、家庭や学校等に居場所のない子にこそ来て欲しい。そう願うのは私ばかりではないでしょう。
最後の会に参加した方からこんな意見がでました。
「なぜ貧困が起こるのか、子ども食堂に来ることができない、本当に困っている子どもたちの支援はできているのか?そこを考えていかなければいけない」
地域において、子どもの個々の状況はますます見えにくくなり、「居場所のない子どもたち」が多く潜んでいる今、子どもにとっての「居場所」とは何かを改めて考えることが必要な時に来ていると思います。次年度において、事業の継続を決めました。
この事業に取り組む中で、いつでも行きたいときに行くことのできる場所があればとの思いで、諏訪のかつてにぎわっていた商店街の空き店舗を「居場所」にと動き出しました。
※分野 1 の記事は以上です。
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